40年前の小さな花束が奇跡の再会を連れてきた
ふと思い出した、ずっと昔の出来事。

今から40年以上前、私たちが新婚旅行で訪れたニューカレドニアと、当時「ニューヘブリデス諸島」と呼ばれていた現在のバヌアツ共和国。
たった7組ほどの小さなツアーだったこともあり、参加者同士すっかり仲良くなりました。
その中の一組のご夫婦が、南の島での結婚式を挙げることになりました。
美しい海の上。
ハイビスカスで飾られた小さな舟に、神父さんやギター奏者さん、スタッフの方々。
そして、なぜか私たち夫婦も「立ち会い人」として一緒に舟に乗せてもらうことに(笑)。
海の上で行われた、とても素敵な結婚式でした。
ところが、ひとつだけ。
日本から衣装一式を持ってきた花嫁さんに、ブーケがなかったのです。
そこで私は、船に乗る前に道端に咲いていた花を摘んで、急いで小さな花束を作りました。
枯れないように水を含ませたガーゼで茎を包んで。
今思えば、本当に即席のブーケです。
でも、その時はただ、
「せっかくの結婚式なんだから、花嫁さんにブーケがあったらいいな」
それくらいの気持ちだったと思います。
その後、私たちはそれぞれの人生を歩み、いつしかお付き合いも年賀状だけになりました。
そして、気がつけば何十年。
そんなある日、そのご夫婦が昔の新婚旅行を思い出されたことから、驚くような物語が始まります。
当時、結婚式を挙げたときにお世話になった神父さんは、今どうしているのだろう。
そう思ったご夫婦は、インターネットで情報を探し始めました。
そして、バヌアツに関する番組を制作していた宮崎県都城市のBTVケーブルテレビ局にたどり着きます。
そこからテレビ局の方々も動き出し、40年以上前の写真を手がかりに、当時のホテルや結婚式に関わった人たちを一人ひとり探していきました。
ウエイターさん、ギター奏者さん、レストランのマネージャーさん……。
たくさんの人の記憶と協力がつながって、とうとう当時の神父さんの消息までたどり着いたのです。
残念ながら、神父さんはすでに亡くなられていました。
けれど、奥様のジルさんが残されていました。
そして、そこにもまた人生の大きな物語がありました。
ご主人を亡くした翌年にはご長男を、その後ご次男を亡くされ、深い悲しみを経験されていたジルさん。
そんな時に突然届いた「40年以上前の結婚式を挙げたご夫婦を探している」という知らせを、ジルさんは「神様からのプレゼント」と感じたそうです。
そして、オーストラリアに住んでいたジルさんがバヌアツを訪れ、当時の仲間たちとともに、あの船上結婚式をもう一度再現することになりました。
小舟を飾り、40年以上前と同じように。
時を超えた再会。
その様子はドキュメンタリー番組として放送されました。
そして、その番組を収めたDVDを持って、今度は私たちのところへも、思いがけない再会が訪れたのです。
ある日、店で食事をされた女性のお客様が、お会計の時に私たちの写真を差し出しました。
そこには、40年以上前の私たちが写っていました。
「……え? なんで???」
一瞬、何が起こったのかわかりませんでした(笑)。
なんと、その女性は、あの新婚旅行をご一緒したご夫婦の奥様だったのです。
私たちの名前と「四日市」という記憶だけを頼りに、今の私たちを探してくださったそうです。
遠い兵庫県から、新幹線などを乗り継いで。
そして、あの日のテレビ番組を収めたDVDを届けに来てくださったのでした。
写真を見た瞬間、忘れていた記憶が次々によみがえってきました。
そして、奥様が言ってくださったのです。
「あの時、作ってくれたブーケが本当に嬉しかった」と。
私は、そのブーケのことをすっかり忘れていました。
でも、受け取った花嫁さんは、40年以上経った今も覚えていてくださった。
なんだか不思議ですよね。
私にとっては、道端の花で急いで作った小さな花束。
でも、その人にとっては、一生忘れない思い出になっていたのです。
そして、あの時の小さな出来事が、何十年もの時を越えて、私たちの再会につながりました。
人生って、本当に不思議です。
一つの出会いが、何十年後かにまた誰かと誰かをつないでくれる。
そして、思いもよらないところで、自分が忘れていた優しさが、そっと戻ってくることもある。
あの時の7組の旅仲間。
海の上の結婚式。
道端の花で作った小さなブーケ。
そして、40年以上の時を経て届いたDVDと再会。
振り返れば、いくつもの偶然と、人と人とのご縁が重なって起きた出来事でした。
今では、このご夫婦とはまた交流が続いています。
先日も、神戸で出店したマルシェに会いに来てくださいました。
そして今では、同じ病気を経験した仲間として、情報交換をすることもあります。
何十年も年賀状だけだった関係が、こんなふうにまたつながるなんて。
本当に人生はわからないものです。
だから私は、これからも「小さな幸せ」を見逃さずにいたいと思うのです。
道端の花一本でも。
誰かとの何気ない会話でも。
旅先での偶然の出会いでも。
その時は小さな出来事に見えても、何十年後かに思い出してみたら、とても大切な宝物になっているかもしれないから。
今日もまた一つ、忘れていた幸せな思い出を思い出すことができました。
人とのご縁って、本当に不思議。
そして、ありがたいものですね。
