夫の食物語
断捨離をしていたら、古い箱が出てきた。

中には、もう使うことのない古いマッチがたくさん入っていた。
その頃は当たり前だったマッチも、今見ると時代そのもの。
夫が27歳で始めた、最初の喫茶店「礎」
そこから、私たちの食の物語が始まった。
夫が脱サラして店を開いたのは、27歳の時。
会社を辞める時は、親に大反対されたらしい。
それでも、どうしても店をやりたい。
「どこかの軒先でもいいから」と親に頼み込み、借金をして
そんな夫の最初の店は、木のカウンターでドリップコーヒーを一杯ずつ淹れる、昭和の喫茶店だった。
毎月3枚ずつ、仲良しのレコード屋さんで買いためた何千枚ものLPレコードは、押入れ一間分にぎっしり収められていた。
昔、自らベースを弾いてバンドをしていた夫は、音楽にもこだわっていた。
特に好きだったのは、ブルースロック。
長い木のカウンターには、いつも常連さんがいて、レコードを聴きながらコーヒーで長居していた。
儲かっているとは言えない店だったけど、
スキーツアーや花見、○○パーティー……
いろんなイベントをして、仕事なのか遊びなのか。
夫にとっては、一番楽しい店だったのかもしれない。
そして店名の「礎」は、まさにその後の私たちの食の道の礎になった。
ここから始まった食の物語は、今も形を変えながら続いている。
